第2章21項
屋根瓦

■屋根材の歴史

我が国の屋根材の歴史では草木系と粘土系の二つに分類されるが、今回は瓦を主体とするので草木系の歴史は割愛したい。
粘土系の歴史は古く、飛鳥時代に造瓦技術を持った瓦工四名が朝鮮の百済より渡来し、我が国に伝えたとされる。(日本書記、元興寺縁起)西暦588年、蘇我馬子が初の瓦葺きの仏寺、飛鳥寺を着工、建立し、聖徳太子が執政の時代に四天王寺、法隆寺など多くの瓦葺き寺院が建立された。
1400年前の奈良、元興寺が一番古い屋根瓦を持つ建物と言われる。そして長い時間をかけて研鑽工夫され今日の日本瓦が形成、確立された。

■屋根葺材(瓦)の秀れた性能

屋根は建物の中で他の構造部分と比べ日照や雨、風、雪、高温多湿など自然の環境で一番過酷な条件を担っている部分である。
外観、内装などに目がうばわれるが忘れてはならない重要な家屋の「頭」の部分なのである。
次にその秀れた性能を挙げてみる。

①耐水性 ②耐火性 ③断湿性 ④断熱性 ⑤通気性 ⑥耐寒性 ⑦遮音性 ⑧耐風性

列記しただけでもざっとこれだけの性能を持っているのである。カラーベスト、ガルマニウム板、その他の瓦などとは根本的に違うと言うことを理解してほしいのである。
幾たびかの風雪、地震にも1400年前の元興寺の屋根瓦が耐えて、平成の今日に残っている理由がここにある。

■粘土瓦

天然の堆積粘土を主体とし、数種類の粘土を水で混ぜ合わせた配合土を成形、乾燥、焼成(1000度~1300度)して完成させたもの。

その産地は次の三箇所が有名である。
◇三州瓦(愛知県)
◇淡路瓦(兵庫県)
◇石州瓦(島根県)

「いぶし瓦」は最終工程に燻化工程が組み込まれると銀色の炭素膜ができ、いぶし銀のような色と「サエ」という独特の艶が出て建物と調和がとれ装美性を高める。