第2章25項
構造見学会

ここで読者の方に落成の前に実施した見学会のことを記しておきたいので、しばしの時間をいただき、頁をその分に当ててみた。

施主さんのご協力を得ることが出来たので構造見学の告知を新聞折込みとホームページを利用し、週末の二日間実施した。

以前から考えていたことであるが昨今のモデル住宅の展示場では完成された家しか見られず、壁内や屋根などをすべて覆いつくすので中にどのような木材がどのような木組みで造られているのかが分らない。つまり柱や梁の構造材を覆いかくす大壁工法のため見ることが出来ないのである。そこで私達の主張する伝統構法である真壁の造りをつぶさに見てもらい今後の家を建てる時の参考になればと思ったのでこの見学会を実施した。

ここに見学者とのQ&Aの一部を紹介してみたい。

一番の注目点はやはり従来にない構法をとっている「石場建足固め構法」であった。
ある見学者が早速質問してきた。
「今まで見てきたコンクリートの上の土台に柱を立てるのでなく、石の上に柱が立っているのが新しい構法なのですか?」

「そうです。これが石場建足固め構法と言います。礎石の上に直接柱が載っています。床下空間を湿気のこない充分な高さまで空けて、足固めと言う高さ八寸(24㎝)、幅四寸(12㎝)のぶ 厚い構造材が左右の柱に特殊な仕口で横に継がっているのです。」
私達は一つ一つていねいに説明した。

「確かに頑丈そうですね。しかし地震で揺れた時はどうなんですか?」

素直な質問に対し次の説明をした。
「この建物は金物で緊結されず、特殊な仕口で結ばれているので圧縮と引っ張りのそれぞれの方向からかかる力に効き、固定部の木が割れたり、壊れたりはし難いのです。この家の荷重は総重量110トンでその自重で幅に余裕のある礎石にどっしりと載っています。しかも伝統軸組みと足固めでしっかり受けて支えてます。復元力が強い柔構造で免震力のある構法なのです。」