第2章25項
構造見学会(3)

この時、横にいた30代後半かと思われる人が鋭くこんなことを言い出した。
「阪神大震災の時の瓦屋根と家屋の倒壊が多かったのは屋根が重かったからではないのですか?」

「確かに倒壊してましたね。けれどもあの倒壊した家屋はほとんどが築後相当年数が経っていたので老朽化が進んでいたことや、荷重を支える構造が弱かったことが原因していたのですよ。その点この家は太い梁やしっかりした木組みで荷重を分散させる造りになっています。」

やはり当時の間違ったマスコミ報道が記憶に残っていたのかもしれない。 次いで多かったのは建築費の質問であった。
「土壁や屋根瓦に立派な木を使っていれば坪あたり相当高くつくのでは?」とよく言われた。

これに対し私達はこのように説明した。
「確かに土壁や屋根の瓦葺きなどは少し建築費は上ります。しかし木に関しては真壁工法のため壁面や天井部など覆う材料が少なく済み、同一材をいろんな箇所に使うので意外と安く出来るんです。ま、一般平均価格より2~3割高くつきますがそれだけ寿命が長く持つ家になりますから結果としてはお得な訳になります。」

価格に関しては造り付けの造作物などは別である点も話しておいた。
会場は多くの人が来訪してくれたので対応に追われたが貫や梁、小屋組みの伝統的な仕口や継手なども詳しく説明をした。
伝統構法が一番新しい家であることに多くの人が気付いてくれたことが今回の見学会の収穫でもあった。
地味であるけれどコツコツとこのような催しを実施してゆくのは意義のあるものである。