第3章6項
台所、風呂場、洗面所、トイレ

生活するのに一番大切なこれらの造りは伝統工法の家にふさわしい物にするため、素材の吟味、型の工夫がなされた。事前に鈴木さんと使用する木の種類や用途について充分に話し合っている。

■台所・食堂

当初、檜のカウンターを予定していたのだが施主さんの奥様の希望が出て欅の厚目のカウンターになった。艶のある面は美しくキッチンにもよく調和がとれている。和風キッチンの味を出した。なんと言っても主婦の働く場所なのである。水屋は檜の作り付け、ヌックカウンターに幅の広い御影石の厚板のテーブルを用意した。食卓も欅の木で木肌に布が縮んだ模様をみせる耳付きのちぢみ杢(もく)の別注したものを置く。この他、虎の毛皮の模様に似た「とら杢」と言うものもある。別に主婦の仕事用になる机を窓際いっぱいに橡(とち)の木で設置し、電話機やノートパソコンや本棚も置き生活に密着させる工夫をした。

■風呂場・洗面所

純和風造りなので思い切って檜の浴槽にし、天井と壁面はさわらの木、床面は檜のすのこを一角に敷いた。床面の石は保温性のある十和田石を使う。
風呂場に隣接して洗面所と脱衣場を兼ねたストレッチルームの部屋を設け、ゆったりとした雰囲気を創った。浴室は半分はり出し、天井と壁面をガラス張りにして外庭は坪庭にして建仁寺竹の塀をめぐらせ、植栽と燈籠、蹲踞(つくばい)に筧(かけひ)を設け和風の雰囲気を醸し出した。

■トイレ

和風を考慮し、壁面は腰板に檜と壁は漆喰にして、床は松。一輪差しのような小物を置ける欅の耳付き化粧棚、手洗いは和風模様のある陶器を付け、落ち着いた空間を創った。
便座は窓外の植込みを眺められる位置に取り付けられている。ついつい長居をしてしまいたいような雰囲気になった。