第5章1項
前栽(2)

落葉樹には梅、桜で春を楽しみ、大きく育つ株立欅は秋の風情があるので奥の方に植えた。松は門冠に枝ばりの良いものを選び、すぐ下には縁起もののなんてんを植える。

玄関横から庭へ通じる戸は丸竹で枠組みし、中に割竹の組子を入れた枝折戸を造り、通路の脇には竹笹のネザサやオカメザサで変化をもたせた。

次に石であるが、景石を配置し植木を植栽する。そして沓ぬぎ石には鞍馬石の重量感あるものを置いた。本来は茶室造りの露地に使う飛び石を配置し雰囲気を作ってみた。縁側に沿って幅広の犬走りを造り丹波石を敷き詰めた。石燈籠はやや小さめの生込み燈籠を立てて日本庭園の趣を出してみた。

風呂から見える坪庭には建仁寺竹を使っているので、庭へ通じる通路にも設ける。

最後に添景物である。手水鉢(ちょうすばち)、蹲踞(つくばい)、筧(かけひ)などを縁側の際に設けた。

自然風景を採り入れた純和風の前栽が完成した時、家と門、塀との調和が見事にとれ、施主さんは大変喜ばれた。